月別アーカイブ: 2025年10月

マエコウ林業のよもやま話~第14回~

皆さんこんにちは!
マエコウ林業株式会社、更新担当の中西です。

 

森林経営計画は“申請書”ではなく経営の設計図。現場で迷わない導線と、資金が詰まらないキャッシュフロー、そして安全と環境の前提を一枚の地図に重ねることが本質です。本回では、(1)棚卸し→(2)路網→(3)施業スケジュール→(4)人員・機械アサイン→(5)原価と収支→(6)リスク→(7)監視KPI→(8)合意形成、までをテンプレ化します。🌲🧭

 

0) 目的とアウトプット 🎯
目的:①安全に稼働 ②赤字現場を作らない ③再造林率を上げる ④地域の納得を得る。
アウトプット:A4×10枚以内の計画書セット(GIS地図、スケジュール、原価表、KPI、合意書式)。長い=良いではありません。

 

1) リソース棚卸し:数字と位置をそろえる 🧮🗺️
林分台帳:林齢・樹種・本数密度・材積(m³/ha)・地位指数・傾斜・作業難易度。
制約レイヤー:保安林区分、河川・湿地、文化財、鳥獣保護区、急斜面、法面崩壊履歴、通信圏外域。
境界:既存杭・石標・過去の立会記録・私設境界。写真と座標で証跡化。
品質把握:胸高直径分布(D級別)、枝下高、曲がり、病害の有無。歩留まり表の初期値を作る。
TIP:棚卸しは“1回完璧”ではなく改善サイクル。現場ごとに観測→台帳更新→次の見積精度UP📈。

 

2) 路網計画:“通す”のではなく“壊れない”を設計 🛣️📐
目標:集材距離の平均100m以下、旋回Rと待避所で交差ゼロ導線。
設計:縦断勾配(作業道8–12%/林道6–10%)、横断勾配2–4%、カーブR≥12–15m、横断溝30–50m毎、湧水の逃げ道確保。
材料・施工:路床転圧回数記録、クラッシャー粒度、法面マット仮撒き。雨期前倒しで排水先行。
維持:大雨後24h点検、詰まりリストの定期清掃。

 

3) 施業スケジュール:年→月→週→日へ分解 ⏱️
10年鳥瞰:間伐→主伐→更新(植栽・下刈・防護)を流域単位で配置。**作業の“連続性”**を意識。
年間計画:雨期・雪期・狩猟期・監査時期・補助採択時期をカレンダー化。許認可の待ち時間を工程に組み込む。
月次→週次:現場の切替タイミング、機械の整備週、教育日(安全・目立て・ドローン)。
日次:TBM(朝礼)のチェック項目、退避ポケットの設定、無線チャンネル、中止基準(降雨・視程)。

 

4) 人員と機械のアサイン:最小の班で最大の出来高 👷‍♀️⚙️
標準班:ハーベスタ1+フォワーダ1+補助1(3名)/ヤーダ型は集材2+土場1など。交替要員の確保で稼働1.2倍。
レイアウト:土場2面(処理用/積込用)で待ち時間削減。交差ゼロを原則に。
保守:日次→油水・グリス・センサー、週次→ローラ・ホース、月次→油圧・フィルタ。壊れる前に止める。

 

5) 原価と収支:式と前提を固定する 💴
時間原価:機械償却+金利+保険+保守+燃料+人件(円/h)。
搬出原価:集材距離・傾斜・路面強度・雨天率の係数で補正。
出来高:1サイクル材積(m³)÷サイクル時間(min)×60×稼働率。
現場採算:収入(用途別単価×材積)−(稼働時間×時間原価)−運搬−再造林費−保険。赤字ラインを事前に計算。
投資採算:路網・機械のNPV/IRR。例:路網90→120m/haで原価▲○%なら投資回収○年と明示。

 

6) リスク管理:トリガーと代替案を併記 🛡️
自然:大雨・台風・降雪・高温。中止トリガー(mm/h・WBGT)と代替作業(整備・仕分け)。
安全:60分行動計画(停止→通報→救急→現場保存)。
市場:単価下落時の用途転換(内装材・景観・熱)。
人員:欠員時の2in1配置(重機+チェンソー)で代替。

 

7) モニタリング:KPIで学習する 📊
KPI:出来高、搬出原価、稼働率、待ち時間比率、納期遵守、安全指標(ヒヤリ・休業災害)、再造林率。
見える化:現場ホワイトボード+月次ダッシュボード。赤信号の定義を数値で固定。
監査:写真台帳(出荷・排水・境界杭・PPE)、認証/補助の証憑をロットで紐付け。

 

8) 合意形成・近隣対応 🤝
1枚説明:工程、時間帯、車両台数、土埃・騒音対策、緊急連絡先。
立会い:境界・伐倒方向・通行。ドローン斜め写真でわかる化。
クレーム対応:24h以内の初動、写真と記録で再発防止へ。
ケーススタディ:6ha急傾斜の主伐更新 🧪
条件:傾斜25°、路網密度60m/ha、集材距離120m、D24中心。
計画:ヤーダ+プロセッサ、土場2面、横断溝40m毎、待避所80m毎。
結果見込み:出来高+18%、搬出原価▲9%、納期遵守98%、再造林率100%。
現場で今日からできる3つ ✅
現場KPIボード(出来高・待ち比率・納期・安全)を作って朝礼で共有。
中止基準(降雨・WBGT・視程)を紙と無線で周知。
路網図に排水・待避・危険レイヤーを追加し、写真台帳と連携。

 

次回の宿題 📝
次の現場についてA4×1枚の計画書(地図・工程・原価・KPI)を作成し、社内レビューにかける。

 

 

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マエコウ林業のよもやま話~第13回~

皆さんこんにちは!
マエコウ林業株式会社、更新担当の中西です。

 

戦後造成のスギ・ヒノキ人工林は、資源量のピークに向かう一方で、手入れ遅れ・過密・労働力不足・搬出コスト・花粉・風倒リスクなど、多岐の課題を抱えます。しかし“課題がある=価値創造の余地が大きい”ということ。現実的な打ち手を整理します。

 

1) 過密→品質停滞→単価低迷の連鎖を断つ ✂️
間伐の遅れは年輪幅・枝下高・曲がり・節に直結し、JAS等級の壁になります。計測のデジタル化(胸高直径分布の自動化、ドローン写真測量、LiDAR)で“証拠を持って”最適密度へ。歩留まり表を現場で更新し続けましょう。

 

2) 路網×機械化で搬出コストを削減 
路網密度が低いと集材距離が伸び、コストと事故リスクが増大。路面排水・カーブ半径・待避所などの標準仕様を持ち、フォワーダやスイングヤーダと整合する線形で設計。現場の“車線幅”と“旋回”を最初に決めるのがコツです。

 

3) 花粉・風倒・乾燥化への適応 
品種と更新様式の見直し、混交化、列状間伐、林縁の防風帯整備でリスクを分散。乾燥ストレス増大には下層植生の維持と土壌有機物の回復が効きます。被害前提の“レジリエンス設計”で、保険・備蓄・バックアップ路網も整えます。

 

4) 用途開拓:構造材+内装・家具・景観へ 
節や色を“欠点”ではなく“意匠”に変えるのが2020年代の潮流。内装パネル・什器・小規模建築・DIY材・外構・土木仮設など、径級や等級の幅広さを武器に。乾燥・仕上げ・表面加工で単価を引き上げます✨。

 

5) カーボン×地域通貨:価値の二重取り
伐採→利用→再造林の循環が回っていることは、クレジットや補助金、公共調達の加点で“現金化”できます。自治体・企業と連携し、地場で“木を使う”プロジェクトを継続的に生み出しましょう。

 

まとめ
人工林は“改善の余白”が大きい資産です。データで密度と品質、路網で搬出、用途で単価、カーボンで外部資金。課題を“事業機会”に反転させる視点が鍵となります。

 

 

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