皆さんこんにちは!
マエコウ林業株式会社、更新担当の中西です。
~アスファルト化~
日本各地で道路や宅地の不透水面(アスファルト・コンクリート)が増えると、森林と流域のバランスが変わります。林業にとってはアクセス性の向上というメリットと、水循環の乱れ・土砂リスク・生態断片化というデメリットが表裏一体。現場で役立つ要点をまとめます。
目次
1|水:雨の行き先が変わる
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浸透↓・表面流出↑で、下流の増水ピークが立ち上がりやすくなる。
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森林側では渇水期の湧水・沢水が細りやすい=苗木活着・間伐後の更新に影響。
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アスファルト道路からの集中排水が谷頭や法面に当たるとガリー侵食や小規模崩壊の引き金に。
対策
透水型舗装・側溝の分散放流、路面横断排水(カットオフ)・雨庭/調整池の併設、渓畔部の緩衝帯(バッファ)設定。
2|土:締固めと微地形の破壊
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舗装・造成で土壌の団粒構造が壊れ、保水・通気が低下。
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集材路や土場の恒久舗装は泥濘を減らす一方で、雨の“逃げ道”を用意しないと周囲の林地へ負荷集中。
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微地形(凹凸)を均してしまうと、実生床や林床植生が痩せる。
対策
土場は半透水化+周縁に浸透帯、法面はヤシ繊維マット+早期緑化、路網は等高線追従で切土・盛土を最小化。
3|生態:断片化と“縁(エッジ)”効果
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舗装道路は生息地の分断を招き、ロードキルや外来種侵入の回廊になりやすい。
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林縁は乾燥・高温・風当たりが強まり、スギ・ヒノキ若齢林や広葉樹更新に不利。
対策
野生動物横断構造(ボックス・カルバートの改修)、在来種での林縁帯再生、路肩の外来草本管理を年次計画に。
4|経営:アクセス向上の恩恵とリスク管理
メリット
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素材運搬の効率化、災害時の消防・救急アクセス、観光・レクリエーションの受け皿。
リスク
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人流増で不法投棄・たき火・盗伐の監視負荷↑。
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降雨強度が大きい地域では、補修・排水維持コストが嵩む。
運用の勘所
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IOTカメラ・入退管理、路網台帳×ドローン点検で維持管理を省力化。
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地元と協定を結び、林道の目的外利用ルール(オフロード、BBQ等)を明文化。
“舗装する/しない”の判断フロー(現場版)
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機能:常時通年通行が必要?(救急・観光・通学・物流)
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地形・土質:集水が集中する谷頭・崩壊地形は非舗装+透水設計を原則に
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生態:希少種・渡りルートがあるか(あれば回避or横断構造)
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維持費:10年スパンのLCCで比較(補修・排水清掃・法面緑化含む)
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代替案:簡易舗装・スラリー・固化土など“半透水”や間欠舗装を検討
低影響(LID)型の組み合わせ例
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透水性舗装+生物浄化側溝(バイオスウェール)
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交差点手前にレインガーデン、末端に小規模調整池
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法面は粗朶・丸太筋工+在来種播種で土砂動態を抑制
モニタリングKPI(簡易で効く)
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路肩の侵食長(cm/年)/側溝の堆砂量(L/回)
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林縁の枯損・倒木本数/外来草本の被度
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小流域でのピーク流量比(整備前後の比較)
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補修発生件数/㎞・年と費用/㎞・年
事例イメージ(要点)
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観光林道の一部を透水化+分散放流に改修 → 豪雨後の路面損傷が減り、下流の濁り苦情が激減。
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製品運搬路は交差点と急勾配部のみポイント舗装、中間は砕石路盤+排水横断で維持費を半減。
アスファルト化はゼロか100かではありません。
林業の視点では、「舗装する場所の選択」×「透水・排水」×「緑の補償」が鍵。
この三点を設計と運用に落とし込めば、アクセスの利を活かしつつ、水・土・生態系・経営の健全性を同時に守れます。
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